寝ても覚めても

私は夏生まれ。
なので、３回目は夏に逢おうと２回目のデートのお別れの時、彼から提案された。
誕生日に逢えたら素敵なんだろうけど、そんなことは出来ない。

その日、彼は仕事を早めに切り上げて、羽田空港から福岡空港行きの飛行機に乗ることになっていた。
私は、空港に迎えに行くまで色々なことをバタバタとしていた。
美容室に行き、髪を染め。新しく買ったワンピースをきて、可愛らしいサンダルを履いて家を出た。

２泊３日のデート。持ち物は？洋服は？家族への言い訳は完璧？誰かにあったりしないかしら。
そんなことを考えながら空港へと向かい、到着ロビーで彼を待った。

嬉しくて胸が高鳴る。と同時に、周りに知った人はいないかとキョロキョロしていた。

彼がゲートから出てきた。本当なら大きく手を振って「おーーーい」ってしたい。
したいけど出来なくて、胸のところで小さく手を振った。
抱き合いたくても出来なくて。
私が座っていたベンチの隣に彼も腰かけて、そっと私の手に触れる。
そして握りしめてくれた。
「やっと逢えた。逢いたかった。嬉しいよ」
どちらからともなく、お互いにそんなことを口にして
手を繋いで地下鉄のホームへと歩いていった。